Allen, C., et al., Isolation of quiescent and nonquiescent cells from yeast stationary-phase cultures. J Cell Biol, 2006. 174(1): p. 89-100.
Margaret Werner-Washburneラボの仕事。
出芽酵母の静止期 (stationary phase) の培養液から、 quiescent cellsとnonquiescent cellsという、性質の異なる2種類の酵母細胞を密度勾配遠心によって分離し、それぞれの細胞の特徴について記載した論文。
Quiescent cellsは、
密度が高い。
90%は、グルコースを使い果たした後の最後の分裂 (post-diauxic) によって生まれたバージン細胞で、残りの10%は一度だけ出芽を行った細胞。同調的に細胞周期を再開始するのでG0期にあると考えられる。
4.6 ± 0.33 um程度に大きさが揃っている。
位相差顕微鏡下で明るく見える。
電子密度の高い液胞を持つ。
ミトコンドリアや小胞体などのオルガネラが電顕レベルでも見つからない。
グリコーゲンを多く含む。
熱ストレスに耐性である。
Reactive oxygen species (ROS)の産生は細胞死を引き起こすが、quiescent cellsはROSが少ない。
アポトーシス、ネクローシスを起こす率が低い。
マイクロアレイ解析の結果、水ストレスとエネルギー代謝に関連した遺伝子の発現が見られる。
Nonquiescent cellsは、
密度が低い。
ヘテロな集団である。
Budを持つ物と持たないものがある。
複数回の出芽を経ている細胞からなり、細胞周期は同調していない。
4.1 ± 0.34 um程度の大きさ。
位相差顕微鏡下では暗く見える。
大きな液胞や、多くのミトコンドリアと小胞体が観察される。
グリコーゲン量はごくわずか。
液胞内に多くの小胞が見られることから、オートファジーが起こっているものと思われる。
熱ストレス感受性である。
postdiauxic期においても出芽を続け、budを持たないnonquiescent cellsを作り出す。
ROSが多い。
アポトーシス、ネクローシスの率が高い。
(PKA活性が高く、炭素飢餓状態でも細胞周期が回り続けるために、アポトーシスが誘導されるらしい。)
主にS288Cを用いて調べているが、W303, BY4742, BY4743においても、高密度の細胞群 (~quiescent cells) が観察されている。このうち、BY4743は二倍体なので、半数体だけでなく二倍体でもquiescent cellsが生じるということである。
酵母細胞も後生動物の体を構成する細胞のように「分化」する。分化によって生じた異質性 (heterogeneity) はselective advantageに寄与するだろう。