研究者にとって最も大きな喜びを感じる瞬間は?と尋ねられたら、それはやっぱり自分の設定した研究テーマの解明につながる決定的なデータが得られた時と答えるでしょう。しかし、そういう決定的なデータが得られたとしても、すぐさまその重要性に気づくとは限りません。気づいたとしてもはじめは半信半疑で、何度も検証を行っているうちにジワジワと確信に変わっていくことがおおいように思えます。何がおこるのか予想もつかないような未踏のテーマに取り組んでいる時ほど、それを解明したのだと分かるのに時間がかかるものです。だから、そんな決定的なデータが得られた時でも、サッカーでゴールが決まった時のような爆発的な感激を味わえるとは限らないのです。むしろ、そういったついガッツポーズをしたくなるようなわかりやすい感激は日々の地道な実験の中で感じることが多いのです。

先々週から2週間取り組んでいたPCRがまさにそんな劇的な感動を与えてくれました。PCRとはPolymerase Chain Reactionの略で、試験管内で遺伝子を増幅する技術です。試験管といいましたが、実のところ、鼻に詰めても痛くないくらい(注、詰めないで下さい)のちっちゃなプラスチックの試験管を使います(普通、チューブといいます)。

PCRは現在の分子生物学実験の代表的な手法といえるくらいあらゆる用途に応用されています。ものによっては非常に難しいPCRもあるのですが、プラスミドDNAを鋳型にしてPCRするなんていうのは最も簡単な部類に入るといってい
いでしょう。失敗しないですよ。ふつう。

そうタカをくくって始めた一発目、PCRしたサンプルを電気泳動してみて、ビックリ。目的のPCR産物が全く増えてないじゃないですか。なんてこった!
ゲロゲロ!
(つづく)

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です