青色は平手醤油にて行う工程です

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材料(3升の仕込みの場合)
大豆 1350 g、小麦 1400 g、塩 (NaCl相当量) 994 g、種麹 0.6 g、仕込水 4000 mL

大豆を蒸す(煮る)
大豆を蒸して柔らかくして、大豆のタンパク質に麹菌が作用してアミノ酸に分解できるようにします。
小麦を炒る
小麦粉ではなく玄麦を使用します。玄麦を炒った後、粗挽きにします。
種切り
熱々の煮豆と炒った小麦をよく混ぜ合わせ、適温まで冷ました後、種麹(麹菌の胞子)を均一にまぶします。
製麹(盛り込み~出麹)
種付けした蒸し大豆と炒り小麦を麹室に移します(盛り込みといいます)。適切な温湿度管理下で培養を行い、1番手入れ、二番手入れという作業を経て、3日~4日で麹が完成します。麹造りの詳細はこちら
塩切り
麹に塩を混ぜることで麹菌の活動を止めます。加える塩の量は塩化ナトリウム(NaCl)相当量で994gです。使用する塩によって含まれるNaClの量が異なるため、塩切りに使用する塩のNaCl含有量から使用量を計算します。平手醤油で使用している「青い海」(シママース本舗)の場合、NaClは91.1%なので、994 x 0.911 = 1092gで塩切りをします。
仕込み
塩切り麹に水を加え、麹が水になじむようよく混ぜます。寒い時期(11月下旬~4月上旬)に仕込むほうがよいと言われています。夏場は、仕込みから3週間は涼しい場所に置くとよいです(可能であれば冷蔵庫の野菜室など15℃以下になる場所)。15℃以上になったとしても、腐ったり、ダメになったりすることはありません。発酵がベストなタイミングより早く始まってしまうかもしれませんが、大きな問題にはなりません。

【重量測定】
仕込みが完了したら、容器を含めた重さを量ってください。重さを量ることができない場合、液面の高さをマジックやテープなどでマークしてください。後々、もろみの水分が蒸発してしまったときに追い水をする量の目安となります。
もろみを置く場所
屋内でも屋外でも大丈夫です。屋外の場合は、雨水がもろみの中に入り込まないようにしてください。容器のフタは空けておくか、緩めておいてください。容器の中に虫が入らないよう、不織布やガーゼをかけておくとよいでしょう。温かい時期(5月~10月)は、温度が上がる場所にもろみを置いて発酵を促します。夏場は30℃を超えるところにもろみを置くようにしてください。気温の上昇と共に発酵・熟成が進み、もろみから醤油の香りが漂ってくるようになります。ひなたに置いた場合、色の濃い醤油になります。
もろみの管理(攪拌と追い水、産膜酵母)
攪拌(かくはん)を行い、もろみの中の菌に酸素をたっぷり与えます。

【追い水】
もろみの世話をするときに、重さを量るなどして水分の蒸発程度を確認します。水分が蒸発して塩分が濃くなると、酵母の働きが鈍くなります。適切な量の追い水をしてから攪拌を行います。

【攪拌の方法】
以下の3通りの方法のうちのどれかで行ってください。
①ヘラやおたまを使って混ぜる。最後に表面を平らに均してください。
②もろみ容器のフタをしっかりと閉めて、転倒混和(上下を交互にひっくり返す)により混ぜる
③同じ大きさの容器をもう一つ用意しておき、そちらにもろみを移し替える(「天地返し」といいます。3升より大きなサイズの場合、攪拌するのが難しいのでこの方法をお勧めします)

【産膜酵母について】
もろみ中に酵母が増えてくると、そのうちの一部がもろみの表面に白い膜を作ります。膜を作る酵母を産膜酵母と呼びますが、これは悪い菌ではないので取り除く必要はありません。ただし、産膜酵母をそのままにしておくと、酸素の作用により好ましくない香り(産膜臭)が発生するので、ヘラで産膜をもろみ中に押し込みます。押し込んでやれば、もろみの中でアルコールを作ってくれるので風味が向上します。最後に表面をヘラで均すようにしてください。
もろみ管理スケジュール
仕込日を0日目としたとき、以下のようなスケジュールでお世話をしてください。日にちは多少前後しても構いません。

1日後 麹が塩水になじむようしっかり混ぜます(1升で5分程度)。塩の溶け残りがないか確認してください。
2日後 (塩が解け残っている場合のみ行います)
3日後 麹が塩水になじむようしっかり混ぜます。塩の溶け残りがないか確認してください。
5日後 塩の溶け残りがなく、麹が塩水になじんでいたら、攪拌は手短(2分程度)に行ってください。
7日(1週間)同上
2週間後 同上 乳酸菌が増えて、もろみが弱酸性になります。
3週間後 酵母が増えてくる頃です。よく攪拌してください。
4週間後 よく攪拌してください(5分程度)。これ以降は、基本的に月に1度の攪拌で大丈夫です。
2か月後 よく攪拌してください。酵母がアルコール発酵を始める頃です。もろみの温度が十分に高ければ(20℃以上)、気泡が出てきてアルコールの香りがするかもしれません。
3か月後 よく攪拌してください。
4か月後 よく攪拌してください。
5か月後 よく攪拌してください。
6か月後以降 月に一度、手短に攪拌してください(1分程度)。
10か月後以降 よい醤油の香りがしているかと思います。いつでも搾ることができます。

※上記のスケジュールとは別に、表面に白い産膜酵母が出た場合はもろみの中に押し込んでください。週に1回程度行えば十分です。夏場は産膜が出やすいですが、秋になり気温が下がると出にくくなります。
搾り
仕込みから1年ほど経った頃、もろみを搾って醤油にします。搾りたての醤油は生揚げ(きあげ)、または生(なま)醤油と呼ばれ、フレッシュな味わいです。生揚げは冷蔵庫で保管し、1カ月程度を目安にお使いください。

搾り方には3通りの方法があります
・使いたいときに使いたい分だけ搾る
・まとめて搾る
・搾りワークショップに参加する
火入れ・澱引き(濾過)
搾った後、火入れ(80~85℃で10分~30分)を行うことで香気が立つと同時に、微生物が殺菌されて保存性が良くなります(常温保存可)。火入れが不十分だと、液面に産膜酵母が発生することがあります。その場合は、再度火入れを行います。あるいは、冷蔵保存してください。

火入れをすると成分の一部が凝固して澱(オリ)ができます。火入れ後、3日~1週間ほど静置しておくと澱が容器の底に沈殿するので、上澄みをコーヒーフィルターなどで濾過してください。

醤油の完成です!