Genome-wide genetic analysis of polyploidy in yeast
Storchova et al.
Nature 443 541-547 (2006)

ヒトを含め、高等脊椎動物は通常二組のゲノムセットを持っている。細胞あたりのゲノムセット数は倍数性 (ploidy) で表され、二組持っている場合は二倍体という。二倍体を2nと表記することもある。なぜ二組あるのかというと、生命が誕生する際に父親(精子)と母親(卵子)からゲノムを一組ずつ譲り受けるからだ。

植物や菌類、無脊椎動物、下等な脊椎動物では3倍体や4倍体など多数のゲノムセットを持つことがあるが(倍数性)、高等脊椎動物では肝細胞などで倍数性がみられることがあるものの、そういった例外を除くと、高等脊椎動物の細胞が倍数性を示すのはがん細胞など病的な状態においてだ。

通常二倍体である細胞が倍数化したとき、その倍数体細胞はゲノムの安定性を失うことが知られている。一部の染色体を失ったり、DNAに傷を付ける薬剤や微小管を不安定にさせる薬剤の処理によって誘発される遺伝子変異や組換えが通常の細胞より高頻度でみられるようになる。

倍数体がこのようなゲノムの不安定性を示すことは知られていたが、その原因は明らかにされていなかった。Storchovaらは四倍体酵母細胞の突然変異体を3,740系統作製し、一倍体、二倍体では生存に影響を及ぼさず、四倍体においてのみ生存に影響を及ぼす遺伝子変異を39種類同定した。彼らはこのような変異を"ploidy-specific lethality ” (倍数性特異的致死)と呼んでいる。

彼らはこの39種類の酵母変異体の原因遺伝子を解析することによって、これらの変異体に共通して、相同組換え、姉妹染色分体の接着、紡錘体における異常がみられることを見い出した。また、野生型の四倍体酵母細胞における染色体消失は二倍体の200倍もの頻度で起こることを示した。

この原因明らかにするためにに彼らが注目したのは分裂装置だった。細胞の容積は倍数性に比例して大きくなるのだが、有糸分裂に関わるいくつかの細胞内コンポーネントについて調べてみると、あるものは四倍体細胞で二倍体細胞より大きくなっている一方、二倍体とサイズが変わらないものもあったりして、サイズがちぐはぐになっていることを突き止めた。そのちぐはぐさのために、染色体分配に失敗する頻度が上がるようだ。

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