3月に一時帰国していたのはこれに参加するためです。
(一部に、レッズを見に行くためという噂がありますが。笑)

生物進化を研究している世界中の一流研究者が一堂に会するおそらく非常に珍しい会議だったんじゃないかと思います。岡崎にある基礎生物学研究所の主催だったので、初日の午前中は岡崎で行われましたが、その後掛川のリゾートホテルに移り、温泉と森林を楽しみながら5日間を過ごしました。

オーガナイザーの方が植物分野の方ということもあり、植物の進化や生態学を研究されている方がメインでした。この13年間、動物を扱ってきた自分にとって、これはものすごく新鮮な感じがしました。ある意味自分の存在が場違いな気もしたんですけど、この違和感は、自分がいま扱っている生き物が酵母であって動物ではないということを自分自身はっきりと認識していないことによるのではないかと思ってます。酵母を使っていても、研究の対象として動物の進化を念頭においているというスタンスは今も変わりありません。

会議の前半は植物が環境に適応し、進化することに関する研究の話が主でした。印象に残ったのは倍数体化です。倍数体化というのは一つの細胞当たりに含まれるゲノムのセット数(通常2つ)が増えるという現象です。動物でも進化の過程において倍数体化が起こったことが知られていますが、植物ではより積極的に倍数体化による環境への適応という戦略がとられているようです。

ちょっと聞きかじった話で正確ではないかもしれませんが、植物の地理的分布と倍数化の関連を調べてみると、倍数化は分布の限界付近で起こりやすいんだそうです。倍数化によって植物は温度、乾燥、浸透圧、紫外線などのストレス(環境かく乱)に対して耐性となるという話と合わせて考えると、分布限界付近すなわち、その生物種の生育環境として最適ではない場所で倍数体化が起こりやすいという話は興味深いです。

適応と種分化国際会議の後半は、進化の分子基盤と理論の話がメインでした。進化の分子基盤は自分がもっとも興味を持っているもので、この国際会議でもっとも楽しみにしていたセクションです。自分のポスター発表も進化の分子基盤に関連するもので、うちの研究室以外でこの分野に関してどのような研究が行われているのか興味津々でした。

で、その内容はというと、これは!というものはなかったです。皮肉にもよく分かったのはこの分野の研究者の間でもまだ共通したコンセンサスがないということです。同じ言葉を使っていても、その定義が異なっていたりして、進化の分子基盤を研究するもの同士でまだまだディスカッションが足りないなと感じました。この国際会議がきっかけとなって、研究者間の交流が活発になることを願っています。

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