ご購入の前に
知っておいてほしいことの一つめは、醤油の完成にはおよそ1年かかるということです。麹からもろみを仕込むと、微生物の力で発酵・熟成が始まります。透明な瓶に仕込むと、その変化の様子が手に取るようにわかります。

醤油づくりの全体的な流れはこちらをご覧ください。

どれだけ愛情と手間暇をかけるかで出来具合は変わってきます。家庭菜園をされている方なら、野菜づくりと同じと考えてください。野菜づくりに比べれば、醤油づくりのほうが世話ははるかに簡単です。愛情をもってお世話をしましょう。

二つめは、搾れる醤油の量です。例えばSSサイズでは最大で5合(900mL)の醤油を搾ることができますが、これは強い圧力をかけることのできる搾り機を使った場合です。家庭での簡易的な搾り方では、その3分の1程度の量になると思います。搾れる量が少ない代わりに、搾り粕のほうに多くのうまみが残っています。肉や魚の粕漬けなど、搾り粕を有効活用してください。
購入前の準備
以下、SSサイズを前提にして説明します。他のサイズでもやり方の基本は同じですが、用意する容器のサイズや仕込みに用いる水の量が変わります。詳しくはこちら。

準備していただくのは、容器と水、ヘラです。必須ではないですが、3kgまで量れるはかりがあるとよいです。

【容器】
2L程度の大きさのものを一つ用意してください。おすすめは以下のような形状のものです。アマゾンへのリンクを貼っておきますが(アフィリエイトです)、ホームセンターなどでも入手できます。広口のものが使いやすいです。発酵が盛んに起こっているときは蓋を薄く開けて酸素が入るようにします。その際、昆虫などの異物の混入を防ぐために不織布やガーゼを被せるとよいでしょう。


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【ヘラ】
もろみを攪拌するのに使います。もろみの表面に産膜酵母が出たときは、産膜酵母をもろみの中に押し込んだり、表面を平らに均すのに使います。


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【仕込水】
660mL用意してください。ミネラルウォーターがおすすめです。硬水・軟水は問いません。水道水を使うときはカルキ抜きのために一度沸騰させて湯冷ましを使いましょう。

【はかり】
諸味の重さを量るのに使います。安いもので構わないので、用意することをお勧めします。

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醤油用の麹の購入
平手醤油のネットショップにて5合の麹をお買い求めください。
ネットショップ(5合)※ショップサイトに飛びます

クーポンコードをお持ちの方は、お支払い情報を入力後、「ご確認」のページにて入力してください。


販売している麴は塩切り済みです。麹に塩を混ぜることで麹菌の活動を止めているので、室温でも1週間程度は安定です。フリーザーで冷凍すれば半年程度の保存も可能ですが、麹の中の酵素が弱くなっていきます。お早めに仕込みを行うことをお勧めします。
仕込み
【時期】
寒い時期(11月下旬~4月上旬)に仕込むのがよいですが、それ以外の時期でも仕込むことができます。夏場に仕込む場合は、仕込みから3週間は涼しい場所に置くとよいです(可能であれば冷蔵庫の野菜室など15℃以下になる場所)。15℃以上になったとしても、腐ったり、ダメになったりすることはありません。発酵がベストなタイミングより早く始まってしまうかもしれませんが、大きな問題にはなりません。

【方法】
塩切り麹を容器に入れます。
※2つの容器に分けて仕込むときは、麹を半分ずつ容器に入れます。その際、大豆が一方に偏らないよう注意します。

小袋の「木桶醤油蔵の蔵付き菌」弓削多醤油株式会社)をキッチンバサミまたは包丁できざんで麹に加えます(注2)。搾り粕には醤油蔵の木桶に住んでいた蔵付き菌(乳酸菌・酵母菌)がたくさん含まれています。搾り粕を加えることで発酵が効率よく促されます(発酵により、もろみの糖分からアルコールが作られ、香りとキレの良い味わいの醤油になる傾向です)。搾り粕を加えない場合は、もろみ中の糖分が残り、まったりとした味わいになる傾向です。

660mLの水を加え、麹が水になじむようヘラでよく混ぜます(目安として5分程度)。塩の結晶が沈殿していたら溶けるまで混ぜます。麹が浮いてしまうと思いますが、塩水に浸かっていない部分があるとカビが生える可能性があります。よく混ぜてなじませることでカビを防止できます。

(注1)写真は3升の仕込みでもろみを手で混ぜていますが、これはプラスチック容器を使っているために容器の外から塩の溶け残りの有無が確認できないためです。塩分が濃いため、手で混ぜるときは手荒れにご注意ください。

(注2)夏場は仕込みから3週間経過後に搾り粕を加えるようにすると、ベストな時期に発酵を促すことができるかもしれません。

【重量測定】
仕込みが完了したら、容器を含めた重さを量ります。後々、もろみの水分が蒸発してしまったときに追い水をする量の目安となります。
はかりをお持ちでない場合、液面の高さをマジックペンやテープなどでマークしておきます(マークするのは翌日が良いです。麹が水を吸うため、水を加えた直後は水面の高さが変化します)。
もろみを置く場所
屋内でも屋外でも大丈夫です。屋外の場合は、雨水がもろみの中に入り込まないようにしてください。容器の中に虫が入らないよう、不織布やガーゼをかけておくとよいでしょう。温かい時期(5月~10月)は、温度が上がる場所にもろみを置いて発酵を促します。夏場は30℃を超えるところにもろみを置くようにします。気温の上昇と共に発酵・熟成が進み、もろみから醤油の香りが漂ってくるようになります。ひなたなど直射日光の当たる場所に置いた場合、色の濃い醤油になります。
もろみの管理(攪拌と追い水、産膜酵母)
定期的に攪拌(かくはん)を行い、もろみの中の菌に酸素をたっぷり与えます。

【攪拌の前に:計量と追い水】
もろみの世話をするときに、重さを量るなどして水分の蒸発量を確認します(前回の攪拌後に測定した重量との差し引きが蒸発した水分量)。水分が蒸発して塩分が濃くなると酵母の働きが鈍くなるので、適切な量の追い水をして仕込み時の重さに戻してから攪拌を行います。

【攪拌の方法】
以下の2通りの方法のうちのどちらかで行ってください。
①ヘラを使って瓶の底までしっかり混ぜます。最後に表面を平らに均(なら)します。
②もろみ容器のフタをしっかりと閉めて、ガシャガシャと上下に振ったり、転倒混和(上下を交互にひっくり返す)して混ぜます。表面が平らでなければ、ヘラで均します。

攪拌後の重量を測定し、記録します。

【産膜酵母(さんまくこうぼ)について】
もろみ中に酵母が増えてくると、酵母がもろみの表面に白い膜を作ることがあります。この酵母を産膜酵母と呼びますが、悪い菌ではないので取り除く必要はありません。ただし、産膜酵母をそのままにしておくと、空気中の酸素の作用により好ましくない香り(産膜臭)が発生するので、ヘラを使って産膜をもろみの中に押し込みます。押し込んでやれば、中でアルコールを作ってくれるので風味が向上します。押し込んだ後はヘラで表面を平らに均してください。
もろみ管理スケジュール
仕込日を0日目としたとき、以下のようなスケジュールでもろみのお世話をしてください。日にちは多少前後しても構いません。お味噌を作るより手間がかかりますが、微生物の作用による変化が味噌より分かりやすく、お世話のし甲斐があると思います。作業自体は短時間で終わります。家庭菜園で野菜作りをされている方は、野菜作りに比べたらずいぶん楽だと感じることでしょう。

もろみ

1日後 仕込日の翌日、麹が塩水になじむようしっかり混ぜます(5分程度)。塩の溶け残りがないか確認してください。容器の蓋は閉めておいてよいです(3週間後まで)。

2日後 (塩が解け残っている場合のみ行います)

3日後 麹が塩水になじむようしっかり混ぜます。塩の溶け残りがないか確認してください。

5日後 塩の溶け残りがなく、麹が塩水になじんでいたら、攪拌は手短(1分程度)に行ってください。

7日(1週間)同上

2週間後 同上 乳酸菌が増えて、もろみが弱酸性になります。

3週間後 酵母が増えてくる頃です。よく攪拌してください(3分程度)。容器の蓋を緩めて空気が容器内に入るようにします(6か月後まで)。

4週間後 よく攪拌してください(3分程度)。これ以降は、基本的に月に1度の攪拌で大丈夫です。

2か月後 よく攪拌してください(3分程度)。酵母がアルコール発酵を始める頃です。もろみの温度が十分に高ければ(20℃以上)、炭酸ガスの気泡が出てきてアルコールの香りがするかもしれません。攪拌後は表面を平らに均します。

3か月後 よく攪拌し、表面を平らに均してください。

4か月後 同上

5か月後 同上

6か月後以降 月に一度、手短に攪拌し表面を均します(1分程度)。これ以降、容器の蓋は閉めておいてよいです。

10か月後以降 よい醤油の香りがしているかと思います。いつでも搾ることができます。

※上記のスケジュールとは別に、産膜酵母が出た場合は、週に1回程度、もろみの中に産膜を押し込み、表面を均してください。夏場は産膜が出やすいですが、秋になり気温が下がると出にくくなります。
搾り
仕込みから1年ほど経った頃、もろみを搾って醤油にします。搾りたての醤油は生揚げ(きあげ)、または生(なま)醤油と呼ばれ、フレッシュな味わいです。生揚げは冷蔵庫で保管し、1カ月程度を目安にお使いください。

搾り方には3通りの方法があります
・使いたいときに使いたい分だけ搾る
・まとめて搾る
・搾りワークショップに参加する(埼玉県三芳町・富士見市エリアで開催予定)

※もろみを平手醤油にてお預かりして搾ることはできません(醤油製造のための営業許可が必要のため)。お客様自身で搾る方法をご検討ください。
火入れ
搾った後、火入れ(80~85℃で10分~30分)を行うことで香気が立つと同時に、微生物が殺菌されて保存性が良くなります(常温保存可)。火入れが不十分だと、液面に産膜酵母が発生することがあります。その場合は、再度火入れを行います。あるいは、冷蔵保存してください。
澱引き
火入れをすると成分の一部が凝固して澱(オリ)ができます。火入れ後、3日~1週間ほど静置しておくと澱が容器の底に沈殿するので、上澄みを回収し、コーヒーフィルターなどで濾過してください。私の場合、自家用なら、もったいないのでオリも使います(煮物など)。

醤油の完成です!